中核的アンラーニングと表層的アンラーニング
2023.12.21
こんにちわ。組織開発がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。
世の中の変化の速度が上がり、組織も個人も変化に適応することが重要になってきています。
変化の適応において、アンラーニングが必要になってきますが、アンラーニングは大きく分けると2種類あります。
この記事では2種類のアンラーニングと具体例について説明します。
アンラーニングとは?
アンラーニングとは、自分の考え方・知識・スキルなどのうち、有効性を失ってきたものや今の状況に合わないものを意図的に忘れ、新しい考え方・知識・スキルを身につけることです。
アンラーニングは通常の学習とは異なり、既存の考え方・知識・スキルなどを意図的に忘れる必要があり、その方法に対して成功体験としてのこだわりあったり、変化することへの不安が大きい場合、忘れる過程は難しくなってきます。
中核的アンラーニングとは?
中核的アンラーニングとは、仕事に関わる考え方そのものの変化を含むアンラーニングです。
具体例
例えば、プレイヤーとしての仕事の進め方として、施策の提案前に行う「下調べ」「裏取り」などの根回しに対して「社内政治」としてネガティブに捉え、行わないようにしていたとします。プレイヤー時代においてはその考えのままでも大きく困ることはなかったものの、新たにリーダーとして部門内外の関係者を巻き込む必要のある役割を担うことになり、関係者の調整を必要とするような仕事が増えた結果、根回しは悪しき「社内政治」という認識から、根回しは必要な関係者調整という認識に変化するようなケースが中核的アンラーニングです。
表層的アンラーニングとは?
表層的アンラーニングとは、仕事に関わる考え方そのものの変化を含まない、専門的な知識・スキルのみに関わるアンラーニングです。
具体例
例えば、プログラミングに利用するエディタを変えるように、考え方の変化を必要としないようなケースが表層的アンラーニングです。
中核的アンラーニングの重要性
新しいことを身につけるだけなら、やるべきことがわかっていれば何とかなるケースは多いと思います。
一方で、中核的アンラーニングのように、考え方の転換が必要な場合、自己に根付いた考えを解きほぐす必要があり、難易度が高くなります。
特に、状況が変化した際に、中核的アンラーニングが必要になりがちです。
例えば
- 管理職の就任や、専門家としてより大きな役割を担うとき
- 転職や異動で新しい環境に飛び込むとき
- 特性が大きく異なる職種変更をおこなうとき
などです。
新たな職場や役割において、中核的アンラーニングが必須になるような場面が繰り返し発生するような場合、その役割や環境における
- キャリアの停滞
- キャリアの危機
すらありえます。例えば、
- 今までの役割ではうまくいっていたが、役割が変わってから似たような場面で失敗が続いている
- 今までの会社ではうまくいっていたが、新しい会社では似たような場面で失敗が続いている
- 「うまくいかないが自分は間違っていないので、環境や他者が悪いはず」「もしくは、」
となっているような状況です。
例えば、時間をかけてじっくり確実に仕事を進める文化の会社から、3割仕上げて素早く取り組みをはじめ、試行錯誤しながら仕上げるような文化の会社に転職した場合、前職でうまくいっていた「じっくり確実」な仕事の進め方をしつつ、自分の仕事の進め方こそ唯一の正解だと考え、関係者にもそれを求めていたとします。一方で新しい環境での当たり前が「素早く取り組み、試行錯誤しながら仕上げる」だった場合、周囲と足並みが揃わず、仕事がうまくいかない状況が続いてしまいます。
対策
中核的アンラーニングを身につけるためには、批判的内省(Critical reflection)が必要になります。
批判的内省は、「自分の中での当たり前」を疑うような内省です。
批判的内省を自分一人で強化するのは難しいため、コーチングで他者の手をかりて周囲から少しずつ解きほぐしていくのが有効です。
また、批判的内省を促していく上で、業績に集中した思考よりも学習に集中した思考が重要です。
そのため、コーチングを行う際には成果そのものではなく、成果を生み出すために必要な知識・スキルの強化や、それによる成長に集中してやりとりするのが有効です。業績に集中しすぎると失敗を回避しやすくなる一方で、学習に集中すると失敗を学習の機会を捉えやすいためです。
なお、あくまで批判的内省の文脈において学習に集中することが大切なだけで、企業の活動において業績への影響を踏まえて考える事自体は大切なので、このあたりは別々の状況での話として区別しましょう。
まとめ
中核的アンラーニングと表層的アンラーニングについてまとめました。
対策についてあっさり目にまとめましたが、実際には中核的アンラーニングは一筋縄ではいきません。
コーチングの進め方によっては、相手に大きな不満を持たせてしまったり、自信喪失をさせてしまいかねません。
土台にある信頼関係を高めることや、相手が変化を受け付ける心身の状態にあるかなどを加味しつつ、急激な進展を求めず、じっくりとした変化を前提に進めましょう。
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